不法就労助長罪とは?【外国人だけでなく、会社の社長にも責任がある!?】
昨今、不法就労問題が取り上げられています。不法就労と言っても、不法上陸なのか、不法滞在なのか、不法残留なのか色々種類がありますが、基本的には「就労制限のある在留資格で、就労不可な職種で働いているケース」が多く見られます。当事務所にも、「このような就労は違法になるの?」や「この在留資格は私の会社で雇えるの?」みたいな問い合わせが増えております。
今回は、どのようなケースが不法就労に該当するのか、簡単に説明させていただきます。
不法就労助長罪とは?
まず、不法就労助長罪とはどういう罪名なのか確認しましょう。下記は入管法で規定されている条文になります。
第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
2 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
一 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。
二 当該外国人が当該外国人の活動を行うに当たり第十九条第二項の許可を受けていないこと。
出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)
この条文の重要なところは、外国人が不法就労者であることを知らなかったことについて過失があるでも、不法就労助長罪になりうるということです。基本的に過失犯は処罰されないのが原則ですが、入管法では過失がある場合でも処罰されます。知らなかったでは済まされないのです。なので、外国人雇用の際には必ず在留カードを確認しておきましょう。
特に、在留資格・在留期限・更新中の有無・資格外活動などは確認しておきましょう。また、偽造在留カードも出回っているケースもあるので、スマートフォンアプリから在留カードの真正確認もしておきましょう。
具体的にどういう時に不法就労になる?
条文を読んでも、どのようなケースの時に不法就労になるか理解できないかと思います。
不法就労になる具体的なケースは下記のような場合になります。
- 在留資格外の就労:例(観光ビザで就労、技術人文知識国際業務ビザで建設現場やコンビニで就労(例外あり))
- 在留資格内の活動であるが、活動範囲を超えている:例(留学生等が28時間を超えて働く)
- 不法に日本にいる人が就労している:(在留期限を過ぎても日本にいる人が就労する)
基本的には上記の3つのケースにあてはまると思います。その中でも「在留資格外の就労」は非常に多いです。昨今報道されているのはこのケースが多数かと思います。
そして、不法就労になるかは、①外国人に不法就労させていた、②事業主がそれを認識・認容していた、③認識・認容できないことに過失があるかというポイントから判断されます。
実際の例ではどうなっている?【判例を踏まえて】
不法就労活動をさせた者(入管法第73条の2第1号)
不法就労活動をさせた者というのはどういう定義になるのでしょうか。事業者としては「あの外国人が自分から働いているんだから」みたいな反論をしたいかと思います。東京高判平成5年9月22日では「外国人との間で、事業者が優位性の立場にあることを利用して、不法就労活動を行うような指示等をしていた」場合には、「不法就労活動をさせた者」と判断されるようです。
自己の支配下に置いた者(入管法第73条の2第2号)
自己の支配下に置いたとはどういう意味なるのでしょうか。「不法就労活動をさせた者」とあまり意味が異ならない気もします。一般的に「自己の支配下に置いた者」とは、事業者としての優位性を濫用する意味ではなく、外国人に心理的・経済的な影響を及ぼして、自己のコントロール下から離れさせないようにするみたいな意味合いがあります。そのため、預貯金のない日本語が不自由な外国人に対し、職や衣食住を提供しつつも、パスポートを事業者が預かるなどしている場合にはこれに該当する可能性があります。
あっせんした者(入管法第73条の2第3号)
この文言は分かりやすいですね。たとえば有料職業紹介事業者などが何度も不法就労をさせるために人材を派遣した場合がこれにあたります。判例(札幌地裁平成31年4月15日)だと「紹介した外国人を不法就労させるとは思ってなかった。また、不法就労と呼ばれる業務も研修の一環だった」と被告が主張した場合でも、当該主張は認められず、不法就労助長罪になっていました。
不法就労助長罪の刑罰は?
不法就労助長罪は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっております。判例を見てると、余程の不法・不当性がない限りは初犯は執行猶予が付きますが、前科が加味されると実刑になります。ちなみに上記で紹介した札幌地裁平成31年4月15日の判決では、懲役1年及び罰金100万円となってます。非常に重い罪であることが分かる判決です。
不法就労をしないためには?
不法就労にならないためにはどうしたいいか。私は下記の内容を守れば、不法就労を回避できるかと思います。
- 在留カードを必ず確認する
- 外国人と丁寧に接する
- 必ず専門家である「行政書士」に在留ビザの取得を依頼する
在留資格の取得は非常に時間も手間もかかります。ただ、このような手続きを取らないと後々大変な目にあってしまいます。
外国人を雇用するときは専門の行政書士や弁護士に依頼するようにしましょう。私の事務所でもこちらから相談は可能です!
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