保育園の保育所入所保留処分についての対処・異議を主張する【審査請求】
保育園の入所ができなかった場合、再申請をするか、審査請求や訴訟(取消訴訟・仮義務付けなど)をすることになります。
保育園入所保留は、行政処分であるので、審査請求や訴訟ができます(理由は他の方のサイトを確認ください)。ただ、審査請求をするにしても、どのような主張をするべきか検討する必要があります。
ネット上の記事を見ると、不適切な主張をするように提起している方もおりますので、今回は、入所保留処分に対する審査請求の主張理由などを考えてみます。

1.児童福祉法第24条第1項
児童福祉法第24条第1項で、市町村は、児童の保育にかけるときに、保護者から申し込みがあれば、それらの児童を保育しなければならないとされています。この条文だけ見れば、市町村は、保育を必要とする場合において、児童を保育所において保育すべき義務を負っていると言えそうですが、同条3項を見てみると、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育の必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう、利用調整することを認められていることが分かります。つまり、保育を必要とする場合において、児童を保育所において保育すべき義務を負っているものの、その全員に対して保育することは不可能であることから、市町村は、ある程度の利用調整を図るようにできる。
また、児童福祉法第24条の規定によれば、児童福祉法が、市町村が保育所の利用について定員を上回る需要がある場合には、保育の必要性を基準に利用調整を行い、その結果として保育の必要性がありながら保育所への入所が認められない児童が生じ得る事態を想定しているものと解するのが相当であると結論付けている市町村もあります(令和4年6月30日付け大阪市長裁決(令和3年度答申第23号))。もっとも、令和7年12月の児童福祉法の改正で、同法24条2項、3項及び4項により、市町村の保育義務だけでなく、保育確保措置・調整義務も生じているので、保育所への入所が認められない児童が生じ得る事態を想定してとしても、一定程度の措置や調整する責任はあると言えるでしょう。
2.憲法違反
親側としては、申込児童が、保育の必要性の認定を受けているにもかかわらず保育の利用を不可とされるとなると、保育を利用する権利を侵害され、保育の利用を可とされた児童との間に著しい不平等が生じ、また、保育を利用できないことで就労が困難になり、親も生活が困窮すると主張できるかと思います。ただ、市町村としては、行政は、本件処分が憲法に反するかどうかの判断は審査庁の権限外であり、ゆえに当審査会の調査審議の対象にはならないと反論することがほとんどなので、あまりこのような主張は不適切だと思慮します。
いや、法律に基づき処分してるのだから、調査の対象外であると反論するのは乱暴ではないかと思うかもしれませんが、日本国憲法第81条の規定により、最高裁判所が一切の法律、 命令、規則又は処分が日本国憲法に適合するか否かを決定する権限を有する終審裁判所であるとされていること、また、「裁判官が具体的な訴訟事件に法律を適用して裁 判するに当たり、その法令が憲法に適合するか否かを判断することは、日本国憲法によって裁判官に課せられた職務と権限であって、このことは最高裁判所の裁判官 であると下級裁判所の裁判官であることを問わない」とする判例(最高裁昭和25 年2月1日大法廷判決)により、一切の法律、命令、規則又は処分が日本国憲法に 適合しているか審査する権利(違憲審査権)は、裁判官のみ付与されたものであると解されます。そして、処分は法令の根拠が必要となるところ、もし、処分が法令に違反していないのであれば、その法令自体が違憲審査の対象となるのであるから、やはり、行政庁には違憲審査権がないというほかないでしょう。
3.処分理由の不提示
行政処分をする場合、相手方の利益を図るために処分理由を明確にしなければならないとされています。実際に、保育園入所保留処分に対する審査請求でも、理由の不提示を原因にする人もおりますが、行政側からは、「保育施設等の利用調整に係る審査基準は公表されているため、これを用いて自らの世帯の合計点数を一定程度算定することは可能であるから、合計点数を知ることができないことが、被処分者にとって不服申立てを行う上での大きな支障となるとは言い難い」や「他の申込者との競合の結果により入所保留となったということがわかれば、不服申立てを行うか否か判断することは可能である」、さらには、「具体的な差の明示が、内定者の指数がどの項目に該当し算定されたものか、その構成を明示すべきであると主張しているのであれば、この構成を明らかにすることでどの幾施設に在園しているか等個人情報が公開されるため妥当ではない」などの反論がされます。正直、個人情報に関する反論については、他事考慮にあてはまる気がしますね。
しかし、自治体によっては、保留通知書に申請者自身の点数や入所内定の最低点を記載している例もあり、理由付記の程度については運用に差があることや、審査基準の内容が画一的でないこと、そして、理由の提示の規定の趣旨は、処分の理由を明らかにすることによって、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の名宛人の不服申立ての便宜を図る趣旨であると解されていることから、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して申請が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければなければならず、単に拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、理由付記として十分でないということになる(最高裁判所昭和60年1月22日)ため、審査請求の主張の一つとして妥当だと思います。もっとも、理由の掲示を求めたところで、保育園入所になるわけでないので、実質的には解決方法としては不適切です。
4.裁量の逸脱・濫用
行政法という小難しい話になりますが、行政側には裁量権が条文の文言や法の趣旨から認められていることが多々あり、裁量権がある場合、行政に対し、その行政処分が裁量権の範囲の逸脱・裁量権の濫用であると主張することになります。
児童福祉法では、規則第24条で「保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう、調整するものとする」とされています。条文を見る限りでは、効果裁量はないものの、要件裁量があることから、裁量があると言えます。そして、裁量の基準としてとして各市町村長が審査基準になるものを公表しているかと思います。市町村は、裁量により、自らこの審査基準(保育園入所だと調整基準と言ったりします)を作成し、これに基づいて、保育園の入所を要する人をポイント制で判断しています。判例でも、「裁量基準は、日常的な行政運営を能率的に行うために、抽象的な法の規定を具体化した基準である」と言っており、裁量基準が定められている場合には「裁量基準に従って行政行為がなされることが平等であり。通常のあるべき行政の姿ということにな」り、「裁量基準が定められている場合には、原則として、裁量基準に従って行われた処分は適法である」とし、「むしろ、裁量基準と異なる取り扱いをすることは、平等原則違反、不当な動機・目的、比例、原則違反等と評価されることがあるとされています(最判平成27年3月3日)。また、少し古めの有名な判例ですが、「行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が準則に違背して行われたとしても、原則として当・不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない(最大判昭和53年10月4日・マクリーン事件)という判決もあることから、行政にとって、審査基準の利便性が分かると思います。ちなみに、審査基準は、行政手続法に基づき、行政庁が許認可等の申請に対して可否を判断する具体的な基準を定め、事務所への備付けなどで公にする義務がある(法5条)ので、原則として、意見公募手続を実施し、30日以上の期間を設けて意見を聴取した上で策定・公表しなければならなりません。
長々となりましたが、つまり、行政側がこの審査基準に基づき保育園の入所の判断をすることは法律上、何ら問題はありません。もっとも、この審査基準が合理性を欠いたり、合理性はあるものの、裁量の過程で看過しがたい過誤・欠落などがあれば、裁量権の逸脱・濫用が認められる可能性があります。ただ、審査基準の合理性を否定するのは極めて難しいので、この審査基準の合理性を検討するよりも、審査基準に基づき、認定された事実が不当であることを主張した方が好ましいかと思います。たとえば、フルタイムで就労しているにもかかわらず、提出した雇用契約書ではこれが認められない・疑義があると言われた時や世帯収入の認定に誤りがあれば、世帯分離がされていることを資料等で事実誤認を主張したり、基準要件ではないが保育園に入所せざるを得ない相当な理由があると主張したにも関わらず、その主張を検討すらしなかった場合には、考慮不尽を主張すればいいでしょう。
まとめ
保育園入所保留処分に困り、審査請求される方がいますが、私の確認する限り、90%以上は棄却され、5%ぐらいは認容されるものの、理由の再提示がされるだけで保留処分には変わりありません。
そのため、もし、保育園入所保留処分に対し、審査請求する場合は、審査基準に基づいてされた処分についての事実認定につき、何らかの異議を訴える方法しかないかと思っております。行政書士法が改正され、個人で申請した保育園の申請に対する審査請求も行政書士が代理できますので、もし、事実認定の誤りがされたら、行政書士にご相談ください。
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