在留カードが取り消し!?強制帰国!?注意すべき事案の紹介【入管法の5つのルール】
出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)には、日本社会の秩序を維持するために、禁止行為や命令違反に対する罰則(行政処分や刑罰)があります。
日本に在留する外国人だけでなく、外国人就労者が増えている昨今では、外国人を雇用する会社の人事部や現場責任者も、入管法を遵守したコンプライアンスが求められます。
今回は、入管法で規定されている「注意すべき規定」を紹介いたします。
この記事の結論
・虚偽申請などで在留カードを取得すると、日本に在留できなくなる。
・在留カードに合わせた活動が非常に大事。たとえば、IT業務をするために就労ビザを取ったのに、清掃員として業務するのは入管法違反。
・日本人役員も適正な業務を外国人にしてもらう義務があり、これを怠ると三年以下の懲役や禁固、罰金が与えられる。
・窃盗や傷害事件で逮捕されてもいいが、有罪判決になったら、執行猶予が付されても、日本に在留できない。
・窃盗や傷害事件以外で逮捕されても、有罪判決で一年以上の懲役や禁固になったら日本に在留できない。
在留資格の取消(入管法 第22条の4)
在留資格の取消とは、外国人が、不正の手段で在留カードを取得した場合や在留資格で決まっている本来の活動を一定期間行わないでいた場合に、当該外国人の在留資格を取り消すものです。次の事実があったときは、法務大臣は在留資格を取り消すことができます。
- 1号:不正の手段により、外国人が入管法第五条第一項各号(一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者等)のいずれにも該当しないものとして、上陸許可の証印又は許可を受けたこと。
- 2号:前号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等を受けたこと(IT業務で就労することを入管に伝えたものの、本当はコンビニバイト働くために就労ビザを取得したなど)
- 3号:不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示(故意でなくとも)により、上陸許可の証印等を受けたこと。
- 4号:不正の手段により、在留特別許可(第五十条第一項又は第六十一条の二の二第二項)による許可を受けたこと。
- 5号:別表第一の上欄の在留資格(就労ビザ)で在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること
- 6号:別表第一の上欄の在留資格(就労ビザ)で在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(高度専門職の在留資格は六月)以上行わないで在留していること。
- 7号:日本人の配偶者等や永住者等の配偶者等の在留資格(日本人の子と永住者の子、特別養子を除く)をもつて在留する者がその配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わないで在留していること(離婚して6月以上経過しているケース)
- 8号:新たに中長期在留者となつた者が、在留資格変更許可を受けた日から九十日以内に、入管に住居地の届出をしないこと。(短期ビザから養親扶養ビザになった人など)
- 9号:中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に届け出た住居地から退去した場合において、当該退去の日から九十日以内に、出入国在留管理庁長官に、新住居地の届出をしないこと(届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
- 10号:中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に、虚偽の住居地を届け出たこと。
なお、在留資格が取り消された場合には、①退去強制(入管法24条)、又は、②出国準備(入管法24条の3)の処分が行われます。
①は悪質な行為、例えば、ウソをついて在留資格を得たり(入管法22条の4の1・2号)、売春のあっせん等が該当します。退去強制で本国へ帰国した場合には5年間(複数回ある場合は10年間・入管法5条9号ロ・ハ)は日本に戻ることができません。
また、①退去強制事由(入管法24条各号)に該当すると疑われるものは、収容令書(逮捕令状みたいなものですね)に基づき、入国警備官は該当者を収容することができます(入管法39条)。収容期間は30日までですが、やむを得ない事情があるときは30日を限り延長できます(入管法41条)。
②は悪質性が低い場合(入管法22条3~10号)に外国人が自らの意思で日本を出るように入管より伝えられます。30日の猶予期間が与えられます。この猶予期間に帰国すればオーバーステイ(入管法24条4号ロ)にはなりませんし、出国準備制度で本国へ帰国すれば、1年後にはまた日本に戻ることが可能です(入管法5条9号イ)。ただ、この期間内に帰国しなかった場合は、退去強制の対象(入管法24条第1項2号の4)となり、かつ、3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役もしくは禁錮及び罰金を併科の刑事罰となります。
退去強制と出国準備制度の詳細はこちらから。
ちなみに、入管法別表第一(就労ビザや家族滞在、留学ビザ等)の者が、①薬物等の犯罪、又は、②住居侵入、文書偽造、傷害、窃盗や横領など入管法24条4号の2に該当する行為をした場合で、有罪判決となったときは、執行猶予が付されても強制退去になります。また、在留資格を有する者(特別永住者を除く)は、上記以外の罪を犯して、無期または1年以上の懲役または禁錮を受けた場合には同じく退去強制事由に該当します。なお、特別永住者は非常に重たい刑罰、たとえば、内乱罪や外観誘致罪を犯したり、無期または7年以上の懲役または禁錮などでないと原則として退去強制に該当しません。
不法在留者への処分(入管法70条)
次のいずれかの場合には、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科するとなっています。ただし、1号、2号及び5号は、上陸後に遅滞なく難民である旨を伝えれば、刑罰を受けません。
- 1号:有効な旅券を所持しない者(有効な乗員手帳を所持する乗員を除く。)で入国したもの。
- 2号:審査官から上陸許可の証印若しくは第九条第四項の規定による記録又は上陸の許可を受けないで本邦に上陸した者。また、不正に上陸許可等を受けた者。
- 3号:不正に在留資格を取得または入国した者で在留資格を取り消された者(入管法22条の4第1項第1、2、5号に限る)で本邦に残留するもの
- 3号の3:出国準備の処分により、期間の指定を受けた者で、当該期間を経過して本邦に残留するもの
- 4号:資格外活動者(第十九条第一項)で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者
- 5号:オーバーステイ後に本邦に残留する者
- 8号:出生や国籍離脱で外国人となるものが、60日を過ぎても在留資格なく在留するもの
- 8号の2:出国命令に係る出国期限を経過して本邦に残留するもの
- 9号:不正の手段により難民の認定を受けた者
上記の1~3号、5号及び8号の2に該当する者は退去強制事由に該当します(入管法24条3号の4イ)(教唆犯や幇助犯も含む)。
資格外活動者の処分(入管法73条)
資格外活動許可を受けずに在留資格に該当する範囲外の就労活動を行った者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは200万円以下の罰金、又はこれらを併科されます。
入管法70条4号にも資格外活動の罰則がありますが、入管法73条では「在留資格の活動以外の収入を伴う事業運営活動、報酬を受ける活動を行った者」となっており、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者」と第70条4号と区別されております。つまり、「報酬を受ける活動が行動のほとんどを占めていれ」ば第70条4号が適用され、「単なる資格外活動」であれば第73条が適用されます。資格外活動がメインの活動になっていたら厳しく処分を受けることになりますね。
不法就労助長の処分(入管法73条の2)
会社の社長などの事業主が、外国人に資格外活動をさせたり、不法な就労をあっせんすると、不法就労助長行為になります。3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれを併科されます。また、上記の行為をした外国人は強制退去事由します(入管法24条3号の4ロハ)
なお、73条の2はこの規定を知らずに外国人を資格外活動で就労させて場合にも適用されます。過失の場合、たとえば、就労させる外国人の在留カードを確認したものの、その在留カードがコピー品などの場合には適用されません。
在留カードの偽造や変造(入管法73条の3~73条の4)
在留カードを偽造したり、変造した場合には下記の罰則があります。
在留カードを単に偽変造・使用した者等は、1年以上10年以下の懲役に処せられます(入管法73条の3)(未遂を含む)。なお、行為の目的を持っていた場合には5年以下の懲役又は50万円以下の罰金になります(入管法73条の4)。
届出義務違反など(入管法71条の2など)
今住んでいる住所地を虚偽で届出たり、在留カードを失くしたのに届け出しなかった時には、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられます(入管法71条の2)。また、変更事項、例えば住所変更や在留カードの内容に変更があったことを届出しなかった場合(入管法71条の3)や在留カードの携帯義務を怠った場合には(入管法75条の3)、20万円以下の罰金に処されます。
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