在留資格「高度専門職」に隠されるデメリットとは

在留資格「高度専門職ビザ」とは

こちらの記事を確認してもらうと分かるかと思いますが、高度専門職ポイントが70点以上かつ年収300万以上あって、職務内容が研究・教授系(1号イ)、経営・管理系(1号ロ)又は経営・管理系(1号ロ)であれば、「高度専門職1号」に取得することができます。

高度専門職ビザのメリットとしては①いきなり5年の在留期間を貰える、②審査期間が早い、③同居する配偶者の優遇措置、④子供が7歳未満であれば自分や配偶者の親を呼べる、⑤永住ビザの優遇措置があげられる。

なお、高度専門職1号で3年以上継続していることで、高度専門職2号を取得できます。2号は在留期限がないので数年に一度ある更新申請がなくなります。

このように「高度専門職ビザ」は非常にメリットが多いビザですが、実務的には使いづらく、また、私の経験的には「永住ビザ」を取るなら高度専門職ビザを取らないほうがいいかと考えています。

高度専門職ビザの落とし穴①

まず、下記の入管法を見てください。

一 高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であつて、我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの

  • イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動
  • ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
  • ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該

これは高度専門職ビザの条文ですが、上記にある「法務大臣の指定する本邦の公私機関」というのがネックになるです。

次に「技術・人文知識・国際業務」の条文を見てみましょう

二 前号に掲げる活動を行つた者であつて、その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う次に掲げる活動

  • イ 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導又は教育をする活動
  • ロ 本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
  • ハ 本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
  • ニ イからハまでのいずれかの活動と併せて行う一の表の教授の項から報道の項までの下欄に掲げる活動又はこの表の法律・会計業務の項、医療の項、教育の項、技術・人文知識・国際業務の項、介護の項、興行の項若しくは技能の項の下欄若しくは特定技能の項の下欄第二号に掲げる活動(イからハまでのいずれかに該当する活動を除く。)

「技術・人文知識・国際業務」の条文では、「法務大臣の指定する本邦の公私機関」ではなく、「本邦の公私の機関」となっています。つまり、高度専門職ビザは法務大臣の指定する機関のみ契約することができます。ただ、落とし穴はこれだけでありません。

「指定する」との文言がある場合、パスポートに「指定書」という紙ペラ一枚の用紙がパスポートに貼り付けられます。この指定書には外国人の働く法人・事務所名や所在地が書かれています。つまり、この指定書に記載された以外の機関では働くことができないことになります。その会社以外で働く場合(転職するときなど)は、変更申請が必要になります。

ちなみに、「技術・人文知識・国際業務」では転職する際には、勤務先の変更届は義務ですが、ビザの変更はしなくても問題ありません。リスク回避のために、就労資格証明書交付申請をしますが、これをせずとも、不法就労にはなりません。ただ、「高度専門職」の場合には、指定書で勤務先にが指定されているので、他の場所で就労した時点で不法就労になります。

高度専門職ビザの落とし穴②

高度専門職2号は永住ビザとは異なります。これは子供が生まれた際に重要になります。

永住ビザを持っている者から生まれた子供は出生から60日以内に入管に申請すれば、永住ビザを獲得することができます。

しかし、高度専門職ビザを持っている者から生まれた子供は家族滞在ビザしか取れません。よく本国の親を呼び寄せるために、永住ビザを取れるのに、あえて高度専門職ビザを申請したいと希望される方がいますが、子供のためにも、永住ビザを優先して取得したほうがいいでしょう。

高度専門職ビザの落とし穴③

高度専門職を取得される方の80%以上は永住ビザを取得することを目的にしているかと思います。ただ、高度専門職と永住ビザの年収要件には注意する必要があります。

高度専門職ビザについては、国内だけでなく国外の収入も含めることができます。ただし、永住ビザを申請する際には、国内所得しか申請要件に含めることができません。

国外からの所得は1000万円以上あるのに、国内収入がほとんどない場合には、永住申請が難しくなってしまいます。

高度専門職ビザの有効事例

①永住ビザを取りたいが中企業やベンチャーなどの規模が小さいで働くことになった場合

上記のような事例だと、「技術・人文知識・国際業務」のビザを取れても、在留期限は1年ほどしか取れないケースが多いです。永住ビザは3又は5年の在留期間が必要になります。そのため、中企業やベンチャーなどの規模が小さい会社で働いている場合、最短で永住ビザを取りたい時は「高度専門職」ビザを取りましょう。

②配偶者が働きたい場合

高度専門職ビザを有する者と同居する配偶者は、事務職等として、企業では働くことができます。ただ、研究、教育、技術・人文知識・国際業務及び興行(演劇等の活動以外の芸能活動のみ)の在留資格に該当する就労活動に限定されています。そのため、アルバイトなどをする場合には、週28時間働ける資格外活動許可を取得する必要がります。

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