本国に親がいない子供の日本への呼び寄せ〜身寄りのいない子供を日本へ〜

はじめに

 以前こんな相談を受けたことがあります。

「インド人の旦那のお姉さん家族が全員コロナで亡くなってしまって、現地に子供が一人で残されているんです!日本に連れてきたいのですがどうしたらいいですか!」

コロナが少しずつ治りつつあるものの、コロナの影響は至る所に現れ始めてきています。本国に子供一人が残されているような話は決して珍しい話ではなく、私が聞いた上の相談も氷山の一角でしょう。

今回はこのような子供たちを日本に呼ぶためには何が必要なのか説明していきます。

前例として

 まず、最初に上記のような親族関係のない人を日本に短期的に呼ぶことは可能ですが、中長期間に渡り在留すること難しいです、特に未成年の場合、そのような専門性もないため、中長期の在留資格を得ることが難しいでしょう。

 ではどうすればいいか。結論としては「特定活動ビザ」を申請することになるかと思います。

 特定活動ビザとは、在留資格(その他)みたいに特殊な在留資格のまとまりみたいな種類になります。その中で特定活動(老親扶養)という種類があります。このビザは本国に暮らす独り身の高齢者である親を日本に連れてきて一緒に暮らすビザになります。非常に難易度が高く、専門家に頼まないと許可が降りないケースがほとんどです。

 今回のケースである「本国に親も祖父母もいない子供を日本に呼びたい」場合、特定活動のビザ申請であれば、許可が降りる可能性があると思います。というのも、特定活動(老親扶養)は「人道的に配慮するべき事案のために許可を出す」趣旨があるので、「本国に親も祖父母もいない子供」場合にも、上記と同様に人道的に配慮するべき事案であると言えるので、許可が降りる見込みがあると考えます。これは告知外事項での認定であると言えます。

養子制度

 しかし、正直、特定活動のビザをあてにするのは心許ないので、その子供を養子にして、家族滞在ビザにした方が安心かと思います。ただ、家族滞在ビザを行う場合には、養子の届出と未成年後見人を選任しなければならないので、時間が非常にかかると思います。そこで、短期ビザで入国させて、特定活動のビザを申請しつつ、縁組の手続きを行なっていく方がいいでしょう。ちなみに、日本の養子制度には①普通養子縁組、②特別養子縁組があります。今回は普通養子縁組の方のみを記載します。特別養子縁組は手続きが複雑かつ時間がかかるので、今回のように緊急性がある場合には普通養子縁組を利用した方が得策です。

 養子縁組とは血縁関係のないもの同士を法律的に親子関係であることを認める制度です(民法727条)。ただ、誰でも養子にすることはできず、養親(養子をしようとしている者)が成人していること、養子より養親が年上である必要があります。また、未成年者を養子にする場合には家庭裁判所の許可や15歳未満を養子する場合には法定代理人の代諾(養子の代わりに承諾すること)が求められます。

 手続きとしては、未成年者の場合、養親となる者が家庭裁判所に申立をしなければなりません(家事事件手続法39条)。必要資料としては、①養親の戸籍謄本、②養子の戸籍謄本、③15歳未満を養子する場合には代諾をする法定代理人の戸籍謄本、④収入印紙が必要です。

 その後、養子本人や実親などの陳述を聴取されます。そのため、当事者は家庭裁判所に呼び出されて、調査官や裁判官から質問を受けることがあります。また、養子の動機や目的、家庭事情、養親の適当性などの審査を受けて、養子縁組許可審判書がもらえます。この審判書を市町村に出すことで戸籍上の届出が可能になり、養親組することができます。

 上記の相談を踏まえると、養子となる者の両親が死亡している場合、法定代理人の代理承諾ができないように思えます。法定代理人がいない場合には、監護者の同意が必要になります。

流れ

 では、どのような流れで、子供たちを日本に呼べばいいのか。まず、短期滞在ビザ(親族訪問)で90日の期間を取得して来日します。その後に特定活動ビザ申請をしながら、家族滞在ビザの可能性も考慮して、養子縁組と未成年後見人の手続きを行います。在留期間が90日以上あれば、ビザの申請中に特定期間となり、在留期限日から2ヶ月間引き続き在留することができます。なお、特定活動ビザを取得後に養子縁組をして家族滞在で10年在留できれば、帰化申請することも可能です。

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