【永住申請専門の行政書士が解説】永住ビザを取得するための3の要件と必要書類の紹介
永住ビザの申請は他の在留資格と異なり、審査期間が長かったり、添付書類の種類が多かったりと、外国人にとっては大変な申請になります。入管から資料の追加や質問事項の対応などをしていると、永住の審査期間は1年以上もかかってしまうケースもあります。そこで、今回は永住ビザの必要書類と提出すると優位になる資料、注意点をご説明いたします。
永住権のメリット
永住権とは、外国人が日本に半永久的に居住できる在留資格です。日本に滞在する外国人が永住権を取得すると多くのメリットがあります。
- ビザの更新をしなくてもいい
- 就労する仕事に制限がない
- 住宅ローンが組めやすくなる
一般的なビザの場合、1〜5年の間に在留資格の更新申請をする必要があります。他方で、永住ビザは在留期限が無制限になるので、安心して日本に在留し続けることができます。
また、永住権を有していれば、仕事の制限が一切なくなります。就労ビザは仕事の種類や所属機関が限定されているので、これに比べると非常に自由性の高いビザになっています。
さらに、家を購入する際に、住宅ローンが組める確率が高くなります。一部のネット銀行に関しては永住ビザがなくともローンを組めますが、現在でも利率の良い大手のメガバンクなどを利用してローンを組む場合には、永住ビザがないと厳しいでしょう。
永住ビザの要件(入管法22条2項)
1.素行が良好であること(同法同項1号)
永住許可に関するガイドラインには「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」が必要とされています。具体的には、
①日本の法令に違反し、懲役・禁固・罰金に処されてない
②少年法による保護処分中の者でない(少年法第24条)
③違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行うなど素行が良好と認められないこと
が挙げられています。(入管・在留審査要領より)
①に関しては、懲役・禁固は出所または執行猶予経過後から10年、罰金・拘留・科料は支払い後から5年を経過していれば該当しません(刑法34条の2)。また、送検されても、不起訴処分・無罪になった場合には問題ありません。
交通違反も罰金刑の一種に含まれるので、過去5年間に交通違反(赤切符)があった場合には注意しましょう。ただ、行政罰である交通違反(一時停止違反や軽微な法定速度超過)は、これに含まれませんが、注意は必要です。
③に関しては、例えば、在留資格に反するオーバーワークや交通違反の繰り返しをしていると、素行が良好でないと判断されてしまうでしょう。
なお、永住許可申請では、必ず前科照会が実施されているため、上記のような犯罪歴を隠すことはできません。
※「配偶者ビザ・永住者の配偶者」を有していれば免除されます(入管法22条2項但書)。
2.独立の生計を営むに足りる資産や技能があること(同法同項2号)
上記と同様のガイドラインに「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産または技能などからみて将来において安定した生活が見込めること」が必要とされています。
これは「独立生計要件」とも言われており、入管の在留審査要領では「生活保護を受給しておらず、現在および将来において自活生活を営むことが可能であると認められること」と示されています。
なお、この「独立生計要件」は、申請人自身で具備している必要はなく、世帯単位で有していれば問題ありません。また、定期的な収入だけでなく、現に有する貯金額、不動産や株式なども考慮されます(ただし、海外の資産は含まないものとされています)。なお、具体的な年収は明らかにされていませんが、ケースにもよりますが、年収300万円(申請日から過去5年間分)ほどあれば要件を具備しているとされます。なお、国外からの取得を独立生計要件に含むことはできません。
※「配偶者ビザ・永住者の配偶者」を有していれば免除されます(入管法22条2項但書)。
3.永住が日本にとって利益になるか(国益要件)
永住が日本にとって利益になるかという国益要件は、入管法上はどこにも記載がありません。ただし、入管が公開している永住ガイドラインで、上記の要件が記載されています。
①居住要件
原則として引き続き10年以上日本に在留しており、かつ、この期間のうち5年以上は就労ビザ(技能実習または特定技能1号を除く)の在留資格で引き続き在留していること。
※「引き続き10年以上」というのは、10年間のうち日本での滞在が180日以下だと「引き続き」とは言えなくなります。90日を超えてもこれが認められないケースもあります。つまり、「連続して日本にいる期間」と考えてみればいいでしょう。
※また配偶者が永住申請する場合、他方が家族滞在や定住者ビザで、上記の居住要件を満たしていなくとも、下記の例外要件を満たしていれば、同時に申請することができます。例えば、配偶者は婚姻が3年以上経過かつ1年以上引き続き日本に在留していれば、実子は1年以上1年以上引き続き日本に在留していれば可能。
※なお、居住要件は例外規定があります。
- 日本人、永住者(特別永住者を含む)の配偶者:婚姻同居期間が3年以上かつ日本滞在が1年以上
- 日本人、永住者(特別永住者を含む)の実子:同居かつ日本滞在が1年以上
- 定住ビザ:日本滞在が5年間 ※難民認定者も同様
- 高度専門職ビザ:スコア70点以上は3年以上の滞在、80点以上は1年以上
- 特別高度人材ビザ:日本滞在が1年以上
②公的負担要件
罰金刑や懲役刑を受けておらず、また、公的義務である納税、年金及び健康保険の納付並びに出入国管理及び難民認定法の届出義務(転職時の届出など)を適正に履行していること。なお、納付期限を過ぎて支払っている場合には注意が必要です。
※具体的には、所得税、消費税、相続税、贈与税や国民年金・国民健康保険・介護保険が該当します。会社員であれば法的控除されているので問題はないですが、経営やフリーランスなどは注意が必要です。(永住ガイドラインより)
※年金や健康保険は申請日から過去2年分の支払い状況を確認されます。免除や猶予で未納になっている部分があれば、すべて支払った(=追納)後から起算して2年後に申請しましょう。他の税金は過去5年間分(贈与税は6年間)に未払いがないか確認しておきましょう。
③在留期限
現に有する在留資格が出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期限(現在は3年でも可だが今後変更される可能性あり)を有すること。
④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないか
また、永住ビザを申請する場合、現在有している在留資格の在留期間満了日以前に永住許可申請をする必要があります。これは、永住許可申請には特例期間措置(ビザの申請中に限り、在留期間満了日または申請日から2ヶ月が経過する日のどちらか遅い日まで在留期間が延長される措置)は適用されませんので注意が必要です。
必要書類
- 永住許可申請書 ※ひながたはこちらから
- 身元保証書及びその人の身分証明書 ※ひながたはこちらから
- 申請理由書
- 了解書 ※ひながたはこちらから ※誓約書みたいなものです。
身元保証人の身分証明書の写し(以前は住民票、課税証明書、在職証明書など必要でしたが、令和3年6月1日より不要になりました。)- 住民票(申請人を含む世帯全員のもの)
- 市町村長の住民税の課税証明書・納税証明書の直近3年分
- 税務署発行の納税証明書その3 ※所轄の税務署で取得可能。見本はこちらから
- 源泉徴収票 (3年間分)
- 在職証明書
- 健康保険証の写し(世帯全員分)
- ねんきん定期便orねんきんネット印刷画面及び納付の領収書
- 保険書の写しまたはマイナ保険証及び納付の領収書
- 自営業や役員なら会社の社会保険料納入証明書
- 銀行口座の残高証明
- 所有不動産の登記簿、株式の保有証明書
- 資格証明、卒業証明書
- 親族一覧表 ※令和6年11月18日より必要になります。見本はこちらから
終わりに
今回は永住ビザの申請に必要な資料と注意事項を説明させていただきました。永住申請は審査期間に時間がかかるだけでなく、集まる資料も多く、作成する申請書も丁寧に説明しなければ簡単に不許可になってしまうので、非常に大変な手続きになります。また、追完資料が要求された場合にはさらに審査期間が伸びる可能性もあるので、最短で許可をもらうためにも、行政書士などの専門家にご依頼するのは一つの手段です。当社も申請サポートをさせていただきておりますので、ご連絡ください。
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