特定技能の受入ができない?入管の行政処分とその対応方法【行政書士が解説】
特定技能の受入人数は、著しく増加しています。特に2025年度はコロナ明けの技能実習生が特定技能に在留資格の変更時期になっているため、昨年以上に増加することが見込まれます。また、特定技能で就労できる分野も増えており、これからの就労ビザの代表格は、特定技能になっていくかと思います。日本で就労する場合は、まずは特定技能と言われる時代もすぐかもしれません。
ただ、特定技能人数の増加に伴って、特定技能を雇用している会社(以下、「受入機関」という。)に対する出入国管理局(以下、「入管」という。)の行政指導や行政処分も増えております。入管のホームページには改善措置命令を受けた企業も公表されています。当事務所にも、「いきなり調査の連絡がきた!」とか「改善措置の書面の作成が分からない」といった相談が増えている傾向があります。
今回は、受入機関が特定技能を受け入れできなくなるケースや行政指導や行政処分を受けたときに、どのような対応すればよいかを説明いたします。

特定技能の受入要件(企業側)
まず、受入技能の基本的な要件を理解しておく必要があります。これは入管法第2条の5に規定されています。
ざっくりこれを説明すると、
・特定技能生と結ぶ雇用契約は、①従事する業務、所定労働時間が通常の労働者と同等、報酬が同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上及び一時帰国の際に有給や無休休暇を取得させること並びに②特定技能生の健康基準と帰国費用の立替
・差別的な扱いの禁止
・省令2条の要件をすべて満たす
必要があります。なお、省令とは「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の一部を改正する省令」を指しますが、内容は下記の通りになります。なお、これも分かりやすく簡略化していますので、詳細は省令をご確認ください。
- 労働社会保険法及び租税法の遵守(税務調査で否認された場合もこれに該当する可能性があります)
- 非自発的な退職者が1年または受入れ中にいない
- 行方不明者がいない
- 禁固以上の刑並びに入管法、刑法、労働法、社会保険法の罰金刑になっていない。または、執行を受けなくなった時から5年経過していない
- 契約5年以内またはそれ以降に、入管法や労働法に関して不正または不当な行為があった(給与未払いや改善命令に従わないなど)
- 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他を管理されないこと。
- 不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約(一定期間勤務することを停止条件とする債務免除や返済途中で退職したことを停止条件とする一括返済を含む)
- 支援費用を特定技能生に負担にさせていない
- 労災保険の適用事業であること
- 原則、企業の継続履行ができる状態であること(債務超過でないこと)
- 原則、口座振り込み
- 共生支援の協力(令和7年4月より)
つまりは、上記の3個に加えて、下の12個の要件を満たす必要があります。これに該当した場合、受入機関の欠格事由に該当するため、特定技能の受入ができなくなります。
なお、その他にも、支援責任者・支援担当者要件や日本語や文章保管要件もありますが、こちらについては、登録支援機関の要件にも関わってきますので、割愛します。詳細は、過去の記事に見てみてください。
受入機関の行政指導(入管法19条の19)
さて、上記の要件を満たしていない場合、どのような処分が行われるのでしょうか。
基本的に、上記の要件を満たしていないことが発覚した際には、まず、行政指導として、上記の要件を確保するように指導が行われます。行政指導は講学上の処分性がありませんが、入管法の場合、次の処分があるので、基本的には、入管の指示に従い、改善報告書などを作成して提出したほうが適切かと思います。
上記の行政指導は、①雇用契約が入管法k第2条の5第1~4項の規定適合していない(上記の要件です)、②支援計画が第2条の5第6~7項の規定適合していない、③受入機関が出入国管理または労働法に関する法令への適合していない場合に、行われます。
受入機関への改善措置(入管法19条の21)
上記の行政指導に従わない場合、受入機関は、入管から改善措置を受けることになります。改善措置は、行政処分である(詳細は下記)ので、行政指導と異なり、法的地位の変動があります。また、改善措置命令がされると、入管がこれを告示することになっております。そのため、コンプライアンス違反の企業であることの烙印を押されてしまう可能性があります。
さらに、改善命令に従わない場合や改善命令に違反した場合には、罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象になります(法第71条の3)。
もっとも、改善措置は、行政処分の不利益処分にあたるため、聴聞や弁明が可能です。また、行政処分については、行政審査法などの不服審査や審査請求その他意見聴取手続が可能です。行政書士は、聴聞・弁明・審査請求の代理ができますので、ぜひご相談ください。
なお、ここからは専門的な話になりますが、受入機関の改善措置は、単なる公表にすぎないので、処分性がないと言われる可能性が高いですが、私の見解では、改善措置は行政処分であると考えております。
これは、上記のような公表が、国情報提供機能を有する一方で、何を公表するかにもよるが、公表されることにより経済的な損失を与える等不利益を被る可能性もあり、その相手方に対する社会的制裁として機能する面がないとは言い難いです。また、上記のような機能がないとしても、公表された者の実質的救済の観点からは、公表の後に、不利益な行政処分や罰則が科されていることが予定されている場合であれば、制裁的な公表の段階において、直接国民の権利義務その他法的地位に影響を与えることみなして、公表に処分性が認められるといえるからです。
行政指導や改善措置命令を受けてしまったら
行政指導や改善措置を受けたら、まず、行政書士に連絡してみましょう。行政指導受けた場合は、改善報告書を作成し、提出すれば改善措置は行われない可能性もあります。また、改善措置命令が出たとしても、弁明の付与や審査請求により、改善措置が取消される可能性もあるかもしれません。
当社は、行政書士の中でも特定行政書士を有していますので、弁明の付与や審査請求の代理が可能です。こちらからお問い合わせください。
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