登録支援機関に依頼しないと難しい?特定技能の採用【登録支援機関不要なケースも紹介】

特定技能制度が始まって数年が経ち、建設業や外食業をはじめ、様々な分野で特定技能外国人の雇用が広がっております。当社でも特定技能ビザの申請は増加傾向にあります。ただ、特定技能の問い合わせの際によく「登録支援機関って必要なの?」と聞かれます。

登録支援機関とは、簡単に説明すると、特定技能生のサポートを行う機関になります。法人だけでなく、個人でも、出入国管理局の許可を受けることで登録支援機関になることができます。

今回は、登録支援機関が必要なケース、そして不要なケースを分かりやすく説明させていただきます。

基本的なポイント

まず、原則として、特定技能生を雇用する場合には、受入する会社や個人は下記のいずれに該当する必要があります(入管法第2条の5

  • 雇用する会社が過去2年間に中長期間在留できる就労ビザ1の人を受入または監理をしたことがあり、常勤役員または常勤職員の中から支援責任者・支援担当者2を選任(省令2条2項1号イ3
  • 過去2年間に就労ビザを有する者に生活支援相談業務4をしており、かつ当該外国人を監督する立場にない役職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任(省令2条2項1号ロ)

そして、上記に該当した上で、次のすべてに該当する必要があります。

  • 支援計画に基づく職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を特定技能外国人が理解できる言語による体制がある(省令2条2項2号)
  • 文書の管理と保管をしていること(同項3号)
  • 雇用契約の締結の日前五年以内又はその締結の日以後に、特定技能外国人支援計画に基づいた一号特定技能外国人支援を怠ったことがない(同項5号)
  • 定期的な面談を実施することができる体制があること5(同項6号)

つまりは、上記の内容をすべて満たすことで、登録支援機関の関与なしに特定技能生を雇用することができるのです。あれ?そう考えると結構厳しいと思いませんか?特に特定技能生の母国語を話せる環境整備や文書の管理は、中小企業だとなかなか難しいですよね。私の感覚だと、特定技能を受け入れている機関の90%以上は登録支援機関の関与を受けているかと思います。

ただ要件が非常に厳しくなっている反面、支援計画(あとで解説します)の全てを登録支援機関に委託することで、これらは満たしているとみなされます要するに「登録支援機関」に、支援計画の実施を委託すれば、母国語を話せる環境整備や文書の管理などは不要になるわけです。登録支援機関は偉大ですね。

支援計画ってなに?

支援計画とは何ですか!?って疑問に思いましたよね。特定技能を受け入れる機関は支援計画書を作成する義務があります。これは登録支援機関に支援計画の全部委託をした場合でも同じです。では、支援計画の内容とは何があるのでしょうか。これは入管法第2条の5に記載があります。

  • 事前ガイダンスの提供(支援責任者または支援担当者が実施)
  • 出入国する際の送迎
  • 適切な住居の確保にかかる支援
  • 生活に必要な契約に係る支援
  • 生活オリエンテーションの実施(支援責任者または支援担当者が実施)
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談又は苦情への対応
  • 日本人と交流促進にかかる支援
  • 外国人の攻めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除されるための転職支援
  • 定期的な面談の実施
  • 行政機関への通報

特定技能を受け入れる場合には、この11個の支援計画内容を定める必要があります。なお、計画の実施は他の第三者に委任することも可能ですが、委任する場合には「登録支援機関」に委任する必要があります。

※現在は一部委託の場合には、登録支援機関にも委託できますが、令和6年6月の入管法改正で「委託先は登録支援機関に限定される」となりました。施行はまだされていませんが、現段階から委任先には注意したほうがいいでしょう。

登録支援機関になる要件

「こんだけ特定技能生の需要が高まっているんだから、ウチも登録支援機関になろう!」と思われた方も多いかと思います。実際、弊社のお問い合わせでもよく質問されます。では、登録支援機関になるにはどうすればいいのでしょうか。

実は、登録支援機関になるには、①欠格事項に該当しないこと、②非該当性、③機関の適合性があります。①については入管法19条の26を確認ください。基本的には、刑事罰や罰金刑を受けていなければ欠格事項に当たりません。今回は②と③について詳しく確認していきましょう。

②非該当性

三つの要件というのは、入管法19条の26にある「支援業務を的確に遂行するための必要な体制が整備されていない者として法務省令で定めるもの」になります。この文言のいずれかに該当してしまうと、登録支援機関にはなれません

  • 過去一年間に、登録支援機関になろうとする者において、その者の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させている者
  • 支援責任者及び支援業務を行う事務所ごとに一名以上の支援担当者(支援責任者が兼ねることができる。)が選任されていない。
  • 情報提供及び相談対応に関して、特定技能外国人が十分に理解することができる言語により適切に情報提供する体制を有していなく、支援責任者又は支援担当者が特定技能外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していない。
  • 支援業務の実施状況に係る文書を作成し、当該支援業務を行う事務所に、当該支援業務に係る支援の対象である特定技能外国人が締結した特定技能雇用契約の終了の日から一年以上備えて置くこととしていない
  • 支援責任者が入管法第19条の22に該当、特定技能所属機関の役員の配偶者、二親等内の親族その他特定技能所属機関の役員と社会生活において密接な関係を有する者又は過去五年間に特定技能所属機関の役職員で、当該特定技能所属機関から委託を受けた支援業務に係る支援責任者となろうとする者
  • 支援責任者が入管法第19条の22に該当していること
  • 一号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させることとしている者
  • 法第二条の五第五項の契約を締結するに当たり、特定技能所属機関に対し、支援業務に要する費用の額及びその内訳を示すこととしていない者

③機関の適合性

機関の適合性の要件は、以下のいずれか該当すれば大丈夫です。ちなみに個人のみ適用できる要件がありますので注意が必要です。

  • 登録支援機関になろうとする者が、過去2年間に就労ビザの受入れ又は管理を適正に行った実績がある者であること(個人のみ。法人は不可)
  • 登録支援機関になろうとする者が、過去2年間に報酬を得る目的で業として本邦に在留する外国人に関する各種の相談業務に従事した経験を有する者であること(弁護士、司法書士、行政書士、社労士の相談業務を指す)(個人のみ。法人は不可)
  • 登録支援機関になろうとする者において選任された支援責任者及び支援担当者が、過去5年間に2年以上法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上欄の在留資格をもつて在留する中長期在留者の生活相談業務(注釈4)に従事した一定の経験を有する者であること
  • イからハまでに掲げるもののほか、登録支援機関になろうとする者が、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として出入国在留管理庁長官が認めるものであること

登録支援機関の登録を受けることも意外と大変なのです。基本的には、技能実習をしていた監理組合であったり、行政書士や社労士事務所が登録をしているケースが多いか思います。

  1. 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、特定活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る)及び別表第2の資格を言います。技術・人文知識・国際業務や技能実習生、特定技能生を含みます。
    ↩︎
  2. 支援責任者は、主に支援計画書の作成、帳簿の管理、支援業務に従事する職員の管理、支援状況の届出に関することを行います。支援担当者は1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当します。なお、登録支援機関の支援責任者と支援担当者には入管法第19条の26に該当しないこと就任条件になります。また、支援責任者については、特定技能所属機関の役員の配偶者、二親等内の親族その他社会生活において密接な関係を有する者でないこと、過去五年間に特定技能所属機関の役職員でないことも条件になります ↩︎
  3. 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 ↩︎
  4. 生活支援相談業務とは、登録支援機関で生活に必要な支援や生活オリエンテーションなどを指します。 ↩︎
  5. 定期面談は、支援責任者又は支援担当者が、外国人及び監督をする立場にある者と面談を実施することができる体制を有していることが必要です。3か月に一度、特定技能生と対面で、かつ、支援責任者または支援担当者が実施しなければなりません。技能実習制度にも同様の規定がありますが、技能実習制度の場合には「監理組合の職員でよい」となっている。特定技能制度のほうが定期面談は厳格になっているのですね。 ↩︎

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