行政書士の業務が広がります。審査請求の代理できます。【行政書士法の改正】
先月29日に衆議院総務委員会で「行政書士法の一部を改正する法律案起草の件」が採決され可決されました(詳細はこちら)。このまま、うまくいければ、来年、令和8年1月1日に行政書士法が改正とされています。
今回は、行政書士法が改正されることにより、行政書士の行う業務範囲がどのように変わるのか解説します。私見も含まれますので、ご了承ください。
なお、行政書士の使命・職責、業務の制限規定の趣旨の明確化及び両罰規定の整備については割愛します。(業務が立て込んでであまり追い切れていないというのが理由です、、、)

【現行】行政書士の審査請求範囲
行政書士法第1条の3
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に関する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
現行の行政書士法は、行政書士が作成した役所に提出した書類に係る申請について、審査請求ができます。例えば、行政書士が作成・申請した生活保護法の審査請求や行政書士が代理して行った情報開示請求申請の却下に対する審査請求など、あくまでも行政書士が申請の時点(審査請求の前)から関与していることが必要になっていました。
もちろん、行政書士が作成した書類でよく、特定行政書士が作成した書類である必要はありません。なお、審査請求は特定行政書士でないと代理できません。
※特定行政書士は、行政書士が研修・試験を合格することで付与されます。
【改正後】行政書士の審査請求範囲
第1条の4
二 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に関する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
改正後は、「作成した」から「作成することができる」という文言に変更されております。この文言の変更がかなり重要になります。
つまり、申請時点で行政書士が関与していなくとも、審査請求の代理が可能になります。行政書士にとっては、これはかなり大きな改正であり、審査請求の代理できる範囲が広がったことになります。
もちろん、審査請求の効用(認容裁決の少なさ)や実質的な範囲(今までも聴聞で関与すれば審査請求代理ができた)から、今までと変わらないんじゃない?という意見もありますが、、、
今後できる審査請求などができる業務とは
では、行政書士法が改正されたことにより、どのような業務ができるようになるのか。
私が審査請求のニーズがありそうな業務を挙げてみました。
- 特定技能受入機関の改善命令(入管法第19条の21)の審査請求
- 在留資格の取消時に意見の陳述(入管法第22条の4第2項)に対する審査請求 ※異論あり
- 道交法違反による免許停止及び免許取消処分の審査請求 ※下記参照
- 虐待通報などに伴う意見聴取等措置(児童福祉法33条の3の3)
- 小規模事業者持続化補助金事業の不許可に対する審査請求 ※今までもできたが、ほかの士業のサポートをできる
- 療育手帳や愛の手帳(各都道府県の要綱)の不許可の審査請求 ※今までもできたが、本人申請が99%
上記の業務などは今後の改正で、審査請求ができるのではないかと考えております。
※現在でも、意見聴取(聴聞)の手続き段階から関与(意見書や陳述書の作成)をしていれば、審査請求の代理が可能です。
【私見】不利益処分による聴聞などの意見陳述も行政書士が代理できるのか?
ここからは完全に私の私見なのですが、今後の改正により、議論になるのは、「許認可等」という文言に不利益処分を含むのかというところになるかと思います。要するに、許認可等、つまり申請に対する処分に係るものに限り、審査請求できるのか、それとも、許認可等及び不利益処分も審査請求できるのかが問題になります。
まず、大前提として、「許認可等」は、行政手続法(平成5年法律第88号)において、「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分」と定義されていることから、不利益処分(手続法2条4項ロ)は含まれないと思われます。
ただ、行政書士法に関する書籍などを見てみると、①意見陳述手続きの代理ができるため、不利益処分に伴う聴聞でも同様に行政書士が代理できる、②行政書士法が許認可等という文言を準用したのは、あくまで、行政手続法との関連性を意識したものにすぎないので、文言だけでなく実質的に解釈するべき(行政書士法の趣旨や目的から)であることから、不利益処分に許認可等を含む、③そもそも当初から許認可等に関して行われる業務とは、許認可等に伴って行われる各種処分、許可、不許可、認可、不認可、不利益処分を行う意味であると様々な議論がなされています。
上記のような理由から、私個人としては、不利益処分も許認可等を含んでいるので、不利益処分による審査請求なども行政書士が代理できると考えております。なお、改正により、不利益処分後に関与した行政書士もこれに関与できるようになります。まあそもそも、聴聞などの意見書を行政書士が作成すれば、今でも不利益処分による審査請求ができると解されるので、そこまで重要な論点でもないかとと思います、、、、