配偶者ビザを申請する際に婚姻証明書を提出しなくてもいいケース【配偶者ビザの必要資料】
日本人が外国人と結婚する場合の流れ
一般的に日本国内で【日本人】と【外国人】が婚姻手続きをする場合、最寄りの市区町村の役所で、外国人の本国の機関(大使館や領事館など)が発行した「婚姻具備証明書(独身証明書)」とその日本語訳を持参し、婚姻届を提出した後、日本にある大使館や領事館で本国に結婚の報告をします。
ちなみに婚姻具備証明書を発行していない国もあります。その際には、これに代わる書類として、例えば、宣誓書(婚姻年齢であること、婚姻上の障害があること)を作成してもらいます。
外国で手続きをしてから、日本で手続きする場合、結婚手続きをした国が発行する婚姻に関する証書の謄本を日本の市町村役場へ婚姻の成立日から3か月以内に提出する必要があります。これは日本が「婚姻挙行地法主義」を原則としながらも、本国法主義を同時に採用しているからです(第24条第3項本文)。
婚姻後の流れ
日本と本国で婚姻手続きが終わったら、次は在留資格「日本人の配偶者等」を申請します。この申請の必要資料の中に、外国の役所が発行する「婚姻証明書」があります。婚姻証明書を添付することで、婚姻していることを立証することができるのですが、日本で先に婚姻すると、外国の役所が婚姻証明書を発行しないケースや発行できないケースがあります。
具体的に挙げると、配偶者がアメリカやカナダ、中国などの人の場合、婚姻証明書を添付しなくても、許可が降りるケースが多々見られます。これは、日本側の婚姻が本国でも有効になる「婚姻挙行地方主義」を採用している国です。婚姻挙行地方主義を採用している国は下記の通りです。
- 日本
- アメリカ
- イギリス
- カナダ
- ブラジル
- ペルー
- チリ
- アルゼンチン
- ロシア
- フィリピン
- 韓国
- 中国(外国人と結婚する場合に限る)
婚姻挙行地法主義を採用する利用としては、①婚姻の成立に関与する公的機関が、当事者の属人法をいちいち調査するのは煩わしい、②婚姻の成立を容易にしてること、③移民系の国の場合、自ら決別してきた国の法律に拘束されるのは不合理であるからという理由が挙げられます。
話を戻しますね。今回、ここで意識して欲しいのは、「婚姻挙行地方主義」だから婚姻証明書が不要というわけではなく、婚姻証明書の交付が難しいから、婚姻証明書の添付は割愛できるだけなのです。
(心の声になりますが、韓国やベトナムのような2人の本国法で適法に婚姻を成立している必要がある「婚姻本国法主義」でなく、「婚姻挙行地方主義」を採用している国で、日本での婚姻が成立していれば、本国の婚姻証明書は不要にしていいと思うのですよね、、、下になぜそう思うのか記載しますが、、、)
ちなみに、アメリカやカナダは婚姻証明書を発行しないのですが、中国の場合、中国国内では戸口簿を独身から既婚へ変更する手続きは大使館や領事館ではできないので、婚姻証明書が交付されません。つまりは婚姻証明書を交付することができないのです。
国際の結婚の成立要件
ーーー(ここからはちょっと学問的な話になるので、結論だけ知りたい方は飛ばしてください)ーーー
(婚姻の成立及び方式)
第二十四条 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
法の適用に関する通則法(平成十八年法律第七十八号)
まず、大前提として、国際結婚が成立する要件として、⑴実質的要件と⑵形式的要件を満たしている必要があります。⑴実質的要件(法の適用に関する通則法第24条第1項)とは、婚姻できる年齢か、重婚禁止、近親婚の規定、親などの同意があります。日本で言うと、「18歳以上で誰とも結婚していないこと」が要件になりますね。この要件は、各当事者の本国法によるとされているます。つまり、その人の国が定める法律に決まります。そのため、例えば、相手の国籍がアメリカなら18歳以上(州によって異なりますが)、ベトナムなら男は20歳以上・女性は18歳以上になります(属人法主義)。
ちなみに、中国人の婚姻年齢は、22歳以上となっていますが、日本で日本人と中国人が婚姻する場合、日本の実質的要件で婚姻することが可能です。よって、日本人と中国人がそれぞれ18歳でも婚姻することが可能です。
これは「法の適用に関する通則法」(日本の国際私法)における反致(その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。)」というものに起因しています。
⑵形式的要件とは(法の適用に関する通則法第24条第2項)、日本で結婚する場合は、市区町村役場への婚姻届が必要になることです。通称、婚姻挙行地と言われます。日本で結婚する場合には日本の法律で決まっている方式を取る必要がある旨が規定されています。具体的に説明すると、⑴日本で生活している外国人同士の婚姻でも、日本の婚姻届を出せば日本の法律上は有効である、②外国に住む日本人でも外国方式の婚姻をした場合でも、その国の公的機関の発行した婚姻証明書があれば日本国でも法律上有効であると言えます。
ただし、日本にいる日本人が、日本人or外国人と外国方式で婚姻手続きをし場合には無効となります。
まとめ
まとめると、⑴婚姻の成立はそれぞれの国の法律の要件を満たし、⑵婚姻の方式は、結婚手続きをする国の法律の要件を満たす必要があるとのことです。例えば、日本で日本人とアメリカ人が結婚する場合には、日本とアメリカのそれぞれで婚姻の成立要件(18歳以上とか)を満たし、日本の市町村に届け出することになります。
そして、婚姻できたら、婚姻証明書(戸籍謄本と外国人配偶者の婚姻証明書)を準備し、在留資格申請を行います。
ただし、アメリカ、カナダ、中国の場合には、外国人配偶者の婚姻証明書は不要になります。
婚姻挙行地方主義の国なら婚姻証明書が不要だと思う理由
「婚姻挙行地方主義」を採用している国で、日本での婚姻が成立していれば、本国の婚姻証明書は不要にしていいと思うのには理由があります。
「日本人の配偶者等」に係る在留資格該当性の意義には、「外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること」が必要性の一つになります(最高裁平14,10,17 判決)。法律上有効な婚姻関係とは、法の適用に関する通則法第24条に基づき有効であることを意味しています。そうであれば、本国で発行される婚姻関係証明書も不要になりませんか?
令和2年10月12日付の入管庁参事官による「法令適用事前確認手続回答通知」では、婚姻関係証明書(本事案ではフィリピン)が提出されないことは、法律上有効な婚姻関係に関わる事情ではなく、婚姻が実態に伴うものであることに関わる事情であることとしています。つまりは、外国人と日本人配偶者との婚姻事実が記載された戸籍謄本が提出されれば、「外国人と日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があること」について疑義が生じることがないと言えます。また、平成29年3月29日付の入管庁参事官による「法令適用事前確認手続回答通知」でも、婚姻証明書が未発行であることのみをもって「永住者の配偶者等」の在留資格該当性が否定されるものではなく」とあります。要するに「戸籍謄本があれば法律上有効な婚姻関係は分かるけど、本国の婚姻証明をつければより信憑性が増す」ということになるでしょう。
このような運用をしているのであれば、必要書類として本国の婚姻証明書を要求しなくてもいいと思うわけです。