特定技能(建設分野)の給与等の重要ポイント3点【国家資格者が解説】

特定技能の建設分野を受け入れる場合、他の特定技能の分野、たとえば、外食や自動車整備と異なり、出入国在留管理局の申請前に、国土交通省に受入計画の認定をもらう必要があります。

この受入計画の認定をもらうのが非常にやっかいで、入管以上に裁量範囲が広く、担当者によって、判断がまちまちになっています。

今回は、特定技能(建設分野)を受け入れる場合の給与等の重要ポイントを解説します。給与以外にも受入計画認定を受けるにあたり、注意する部分はたくさんありますが、今回は、雇用条件の給与についてのみ解説します。

条文などの根拠

まず、受入計画の認定を受ける要件を告示から確認してみましょう。

告示
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令及び特定技能雇用契約及び 一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の規定に基づき建設分野に特有の事情に鑑み て当該分野を所管する関係行政機関の長が告示で定める


(建設特定技能受入計画の認定)
第三条
3 国土交通大臣は、第一項の規定による認定の申請があった場合において、その建設特定技能受入計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
1号ホ  職員の適切な処遇、適切な労働条件を提示した労働者の募集その他の国内人材確保の取組を行っていること。
2号 一号特定技能外国人に対し、同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を安定的に支払い、技能の習熟に応じて昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇用契約 に明記していること。

受入認定の要件は、告示第3条で規定されています。その中でも、給与等の雇用条件は、「1号ホ」及び「2号」で規定されています。

非常に専門的な話になりますが、この告示には要件裁量はありませんが、効果裁量は非常に広範囲で設定されています。もちろん、要綱や通達で、裁量範囲を確定しているものがありますが、担当官によって、裁量があることは否めません。そのため、一般の事業者様が受入認定を申請して、認定を受けることができても、後日の監査で、色々指摘を受けることが大いにあります。

①最低賃金額

まず、最低賃金額をどのように算出するべきか考えましょう。下の例を参考にしましょう。

  • 基本給:138,000円
  • 職務手当:40,000円
  • 皆勤手当:3,000円
  • 通勤手当:2,000円
  • 住宅手当:30,000円
  • 月平均所定労働時間:168時間(年間休日113日、1日の所定労働時間8時間)

この場合、最低賃金は、基本給+職務手当+住宅手当を合算した額から、月平均所定労働時間を割って出します。要するに、1月あたりの時給を出す計算になります。

最低賃金額に合算できる手当は、法令で制限されており、勤務状況に関係なく、一律に支給する手当のみ合算することができます。そのため、皆勤手当や通勤手当(距離などに関わらず支給するときは合算可能)、家族手当、残業代等の所定外労働の対価関する手当は含むことはできません。(最低賃金法第4条第3項、規則第1項、国交省通達)

そのため、上記の雇用条件だと、1時間当たり1,239円になります。この値が地域または産業ごとの最低賃金額を上回る必要があります。

しかし、特定技能(建設分野)の場合、地域または産業ごとの最低賃金額の1.1倍した価格が最低賃金になります(通達)。

例えば、東京都に本店がある企業の場合、東京都の最低賃金は1,226円になるので(令和7年12月現在)、1,349円でないと受入認定計画の要件を満たしません(告示第3条第3項第1号ホ)。

そのため、上記の雇用条件だと、特定技能(建設分野)の受入はできないことになります。なお、この1.1倍の規定は、特定技能外国人だけでなく、日本人労働者にお適用されることに留意が必要です。

なお、話がズレますが、残業代の計算をする場合(割増賃金の基礎額)、家族手当、通勤手当、住宅手当などは残業代計算に含めなくていいので(労働基準法第37条第5項)、上記の雇用条件の場合、基本給+職務手当+皆勤手当で算出すればいいことになります。

②月給制、手当、昇給、賞与及び退職金

特定技能(建設分野)を受け入れる場合、次の部分にも注意を向ける必要があります。

  • 特定技能は月給制にすること(要綱)
  • 昇給は必ず必要で、その額は1年に1回1,000円以上であること(通達)
  • 報酬の額は、相当の経験を有する者(3年以上経験したもの)として扱うこと(要綱)
  • 賞与、各種手当や退職金についても日本人と同等に支給する必要があること(要綱)
  • 特定技能外国生の報酬額(労働の対償として使用者が労働者に支払うすべての金銭)が、日本人の建設技能者の報酬額と比べ、正当かつ合理的な理由なく低くなっているときその他不当に差別的なものとなっていない(通達)

一番下については、特定技能外国人だけが不利になるような条件は認めらないという意味なので、たとえば、就業規則や賃金規定において、無期雇用契約者と有期雇用契約者で賞与・退職金の取扱いが異なる場合でも、特定技能性は、無期雇用契約者と同等以上として取り扱う必要があります。もっとも、経験数や保有資格、業務内容が異なっているなどの相当な理由があれば、給与に差をつけることは可能です。

上記の要件は、「告示第3条第3項第1号ホ」からきていると思います。

なお、受入計画認定時に、各種手当の額の具体的な計算額を要求される場合がありますが、このような取り扱いは、要綱や通達で要求されることでなく、裁量権の範囲を逸脱していると評価できると思います。というのも、受入計画の認定を要する理由は、計画の趣旨(※)が、「労働者の安全・就労を維持」するところにあるので、最低賃金(1.1倍規定を含む)を超え、その他の雇用条件の要綱・通達を満たしていれば、各種手当の額の具体的な計算額がなくとも、労働者の安全・就労維持は容易にできると言え、受入計画の趣旨に反しないと言えるからです。

③日本人の給与

一緒に同じ業務に従事し、かつ、同等の技能を有する日本人の給与条件等の処遇が低い場合は、処遇改善等、国内人材確保に向けた取組を行っておらず、告示第3条第3項第1号ホを満たしていないと評価されます。

具体的には、日本人の給与等も1月あたりの時給が、地域最低賃金の1.1倍になっている必要があります。

※計画は、低賃金や社会保険未加入といった処遇で労働者を雇用する等の劣悪な労働環境が確認される企業の建設市場への参入を認めず公正な競争環境を維持すること、他産業・他国と比して有為な外国人材を確保すること、雇用者・ 被雇用者双方が納得できる処遇により建設業における外国人技能者の失踪・不 法就労を防止すること、特定技能所属機関における受注環境の変化が起こった 場合でも建設業界として特定技能外国人の雇用機会を確保すること等、特定技能外国人を受け入れるにあたって建設業界として必要であると認められる事項 について、国土交通大臣による認定及びその実施状況の継続的な確認により担 保しようとするものです。したがって、計画の遵守は、国のみならず、業界の共通利益に資するものです。

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