永住許可が取消される?既存の要件と新規要件を分かりやすく説明
一般的な在留ビザには在留期限が設定されています。数か月のものから5年のものまで幅広くありますが、永住許可を受ければ、在留期限に悩むことなく、在留することができます。また、永住ビザは、配偶者ビザ等の身分系だけなく、ビザ就労ビザ(技能実習や特定技能1号を除く)の人も申請することができます。そのため、今後は永住許可を受ける人が少しずつ増えてくることが予想されます。
ただし、そんな便利な永住許可ですが、現在の永住取消許可事由の追加が検討されているようです。今回は、どういう場合に永住許可が取り消されてしまうのか、また、追加で検討されている要件は何かを説明します。
現在の永住許可の取消事由(入管法第22条の4第1項)
- 再入国またはみなし出国の処理をせずに、日本から出国
- 90日以内に引っ越しの報告(届出)を入管にしていない ※14日以内に報告する義務があります
- 虚偽の居住地を入管に報告したこと
- 退去強制事由に該当する場合
※退去強制事由は、①薬物や売春の犯罪、又は、②住居侵入、文書偽造、殺人、傷害、窃盗、詐欺、横領、危険運転致死をした場合、執行猶予が付されても強制退去事由になります。また、特別永住者以外は、上記以外の罪を犯して、無期または1年以上の懲役または禁錮を受けた場合(執行猶予なら猶予期間がすれば問題なし)には同じく退去強制事由に該当します(不思議なことにわいせつや不同意性交罪のは含まれていません)。詳細はこちらより。
※売春を行った・斡旋した者などの風営法違反は、入管の事実認定で退去強制事由になります。検察の起訴や裁判所の判決などが不要なのです。
※なお、②に関しては、定住者や配偶者ビザ等の身分系の在留資格であれば、退去強制事由に該当しません。
今後追加される永住許可の取消事由
故意に繰り返して、公税公課の支払を払わない(延納を含む)
税金を払いたくない理由で、税金や社会保険料を納めない場合にこれが該当します。会社員の人であれば、会社が皆さんの代わりに、給料から引いて、国に税金を納めているのですが、会社の社長やフリーランスの場合には、自分で税金を納めるため、税金を滞納してしまう人が多いのです。なお、延納(期日までに支払っていない)している人もこの制度の対象になります。
どうせ未納でもバレないかと思う人もいるかもしれませんが、この改正案と同時に市区町村等が税金未納等者を入管に通報できる制度も導入されるようです。市区町村としては、税収入を増やし、かつ、税負担を減らしたいってのが本音なので、この制度は結構利用されるのではないかと踏んでいます。ただ、全国の自治体で色々内部事情があるので、地域差は多少出るかと思いますが。
ある犯罪で1年以上の懲役または禁錮を受けた者
現在、永住者をはじめとする身分系ビザは、売春や薬物事件などを重大な事件を除き、懲役や禁固が確定しても退去強制事由になっていません。ただ、今回の改正案で、住居侵入、文書偽造、殺人、傷害、窃盗、詐欺、横領、危険運転致死して、かつ、1年以上の懲役または禁錮が確定した場合には、永住許可の取消事由になります。つまり、現在の就労ビザ等に限り適用されている退去強制事由を、永住許可者にも適用しよう見たいな感じです(そうすると、永住ビザの価値って配偶者ビザより落ちるし。あと、なぜ退去強制事由の法24条の4号の2を改正すればいいのになんですかね)
ただ、新規の要件で、永住許可を取り消した場合でも、入管側で職権で違う在留資格に変更することができるようです。なお、あくまで職権で検討して、許可することができるようなので、どういう運用になるか分かりません。