同性婚のパートナーは在留ビザを取ることができる?【特定活動ビザとは】

日本人の配偶者であれば「日本人の配偶者等ビザ」、就労ビザの配偶者であれば「家族滞在ビザ」を持つことができます。ただ、国際的に、性に関する価値観は多様解しており、海外の一部地域では、同性婚を認めております。ただ、日本では同性婚は認められていません。

そこで、同性婚をしたパートナーは、日本で滞在するために、どのようなビザを取得すればいいのでしょうか。

同性婚について

同性婚とは、男性と女性ではなく、広義の意味で同性同士が結婚することを言います。近年では、性的マイノリティの人権擁護が世界的に認められ始め、LGBTという言葉も世間に認知されつつあります。

2023年現在、同性婚を認めている国は、アメリカの一部州、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、ベルギー、スウェーデン、オーストラリア、ブラジル、台湾、南アフリカなど30カ国以上存在します。

日本では周知の通り、同性婚をすることは認めれておりません。なお、地方自治体によるパートナーシップ協定を実施している市区町村もありますが、あくまで私的な効力であり、公的な効力が認められているとは言い難いのが現状です。

フランスでは民事契約で同性婚パートナに法律に準じた地位を与える制度を行なっております。日本でも同様な形式、例えば、公証役場で公正パートナー契約証書を作成し、市区町村に届け出をすることで、二人の新戸籍を作成し、結婚の届出に準じた取り決めを行うような制度を導入してもいいかと私は考えておりますが、なかなか理解が進まないのが現状です。

入管による同性婚の見解

同性婚のビザについて、法務省出入国管理局はこのような意見を出しております。

同性婚の配偶者に対する入国・在留審査について(通知)

在留資格「家族滞在」,「永住者の配偶者等」等にいう「配偶者」は,我が国の婚姻に関する法令においても有効なものとして取り扱われる婚姻の配偶者であり,外国で有効に成立した婚姻であっても同性婚による配偶者は含まれないところ,本年5月にフランスで「同性婚法」が施行されるなどの近時の諸外国における同性婚に係る法整備の実情等を踏まえ,また,本国で同性婚をしている者について,その者が本国と同様に我が国においても安定的に生活できるよう人道的観点から配慮し,今般,同性婚による配偶者については,原則として,在留資格「特定活動」により入国・在留を認めることとしました。ついては,本国で有効に成立している同性婚の配偶者から,本邦において,その配偶者との同居及び扶養を受けて在留することを希望して「特定活動」の在留資格への変更許可申請がなされた場合は,専決により処分することなく,人道的観点から配慮すべき事情があるとして,意見を付して本省あて請訓願います。なお,管下出張所長へは,貴職から通知願います。

同性婚の配偶者に対する入国・在留審査について(通知)

法務省管在第5357号
平成25年10月18日

上記の通知を解釈すると、入管法上の配偶者という地位に同性婚は含まれないとしています。そのため、同性婚をした場合、「配偶者ビザ」や「家族滞在ビザ」の取得はできません。

ただし、特定活動でのビザの取得は可能であるとしています。しかし、この通知でも次の二つの事案によって取得できる余地が変わります。

外国人同士の同性婚

上記の通知によれば、外国人同士の同性婚については、当該外国人の本国のおいて婚姻が有効に成立している場合、一方に日本に在留できる資格があれば、他方は特定活動ビザで日本で滞在することが可能になります。

具体例を挙げると、カナダ国籍で日本の永住ビザを取得している女性は、フランス国籍の女性と、両国の法律で婚姻が有効的に成立している場合には、フランス国籍の女性に特定活動ビザが与えられる可能性があります。

ただし、このビザは告知外特定ビザになるので、在留資格認定証明書交付申請(新規で日本の在留資格を得る申請)では申請することができません。そのため、留学ビザや短期ビザなどを一度取得して、変更申請(在留資格の変更をするための申請)を行うことになります。

外国人と日本人の同性婚

上記の通知によれば、本ケースの場合、パートナーには特定活動ビザは発行されません。これは、同性婚のパートナーに発行される特定活動ビザには「本国で有効に成立している婚姻関係」が必要になるからです。日本人の場合、日本では同性婚は認められていないので、同性婚は有効的な婚姻関係を作ることはできません。そのため、特定活動ビザの取得はできません。

2023年3月10日に日本人男性と米国で同性婚をし、「定住者」としての在留資格を国に求めて訴訟で争っていた方に東京出入国管理局は「特定活動(1年)」の在留資格を発行しました。

そのため、今後は、外国人と日本人の同性婚した場合でも、当該外国人に特定活動ビザが付与されることが見込まれす!!!

ただ、2022年の東京地方裁判所の判例では、「外国人同士の同性カップルであれば『特定活動』という在留資格が与えられるのに,外国人と日本人のカップルだと認められないのは,法の下の平等を定めた憲法の趣旨に反する」と意見を出しています。もっとも、本件の原告は定住ビザの変更を主張していたようですが、定住ビザの取得はできておりません。裁判所も定住ビザの取得が妥当であると判断はしていません。

実際、上記のケースで結論が異なるのではいかがなものかと私は考えておりません。憲法14条には法の下の平等が記載されております。令和3年3月17日札幌地裁判決では、憲法14条には、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱は許されないとの規定であるとされています。

異性愛カップルにある婚姻の選択権が、同性愛カップルにはないことが合理的な区別といえるかを検討する必要があるとして、①様々な法的効果を享受する利益は同性愛者にも存在し、また、②子を産んで育てることは自己の判断に委ねられていること、③子を産まないという夫婦の選択も尊重すべき事柄であること、④結婚制度の主たる目的は子を産むことではなく、夫婦の共同生活の保護であることから、同性愛者が異性愛者と同様に婚姻の本質を伴った共同生活を営んでいる場合にこれに対する法的保護を否定する趣旨や目的まで有すると解するのは相当でないとしています。

そして、婚姻制度が社会通念によって定義されることから,同性婚に対し、同性愛者のカップルの婚姻による法的効果を享受できないとするのは、自らの意思で選択したわけでない同性愛者の保護に欠けるなどとして、法的効果の享受を一切提供していないことは,立法府の広範な裁量権を持ってしても合理的根拠に欠ける差別的取扱として憲法14条に違反すると判決を出しました。

上記の件でも同様で、日本人と外国人の同性婚、外国人と外国人との同性婚で、日本に滞在する機会及び法的効果の享受に自らの意思と関係なく、異なる待遇が生じることは、事柄の性質に応じた合理的な根拠があるとは言えない気がします。同性婚にはメリットもデメリットもありますが、そのメリット・デメリットを受ける機会を奪うのは少し違う気がするなあと思います。まあ、入管には広い裁量権があるので、何ともいませんが、、、

同性婚が認められない理由として、色々な考えが浮かんでくると思いますが、憲法14条がある以上は、その考えを封殺してしまうのはなんだかなあと最近考えています。

同性婚の特定活動ビザの要件

上記の特定活動ビザの取得要件は、告示外規定であるので、明確ではありません。ただ、申請の経験から考えると以下の要件があるのではにかと考えられます。

  • 外国人同士の婚姻が、双方の本国で有効なものとして成立しているか
  • 日本で婚姻生活を送れるだけの経済力があるか
  • 二人の関係性に偽装性がないか

特に、実体のあるパートナー関係という部分については非常に細かく確認されると思います。実際に、私もこのようなビザ申請をサポートする場合には、二人の関係性に疑いを持たせないために、出会の経緯や連絡頻度、デートなどの写真やメッセージのやりとり部分を丁寧に資料に反映させております。

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